前回に続き、今シーズンの開幕戦であるドルフィンズとニューイングランドペイトリオッツの過去の開幕戦を振り返ってみたいと思います。

今回は1996年の開幕戦です。1996年といえばドルフィンズにとっては大きな転換期となる年でした。偉大なHCドン・シューラが勇退し、新しいHCとしてジミー・ジョンソンが就任しました。ジョンソンはダラスカウボーイズを2年連続スーパーボウル王者に導き、カウボーイズの黄金時代を築いた名将でした。当然、ドルフィンズでもその手腕が多いに発揮されることが期待されました。

そのジョンソンのドルフィンズHCとしてのデビュー戦となったのが1996年の開幕戦、ホームでの対ペイトリオッツ戦でした。その試合でジョンソンはRBカリム・アブドル-ジャバー、LBザック・トーマス、DTダリル・ガードナー、FBスタンリー・プリチェットといった新人選手を先発として起用して周囲を驚かせました。

その中でもひときわ目立ったのがトーマスでした。トーマスはディフェンスの要のミドルLBとして先発してその試合で大活躍、チームトップとなる9タックルと1QBサックを記録して勝利に大きく貢献しました。結果、ドルフィンズは24-10でペイトリオッツに快勝しています。

トーマスはドラフト5巡目(全体154番目)指名という下位で入団しました。体も小さくNFLで使いものになるのかという懸念もあったようですが、そのスピードとハードタックルで一躍注目されました。

実はドルフィンズはオフのFAでLBジャック・デルリオを獲得しており、本来ならば先発ミドルLBはデルリオが務めるはずでした。しかしトーマスの印象があまりにもよかったために、デルリオはドルフィンズでプレーすることなく開幕前に引退してしまいました。それほどトーマスがすばらしい選手だったということでしょうね。

また、その試合ではアブドル-ジャバーも26キャリーで115ヤードを獲得してTDランを記録、プリチェットも6回のパスレシーブで77ヤードを獲得するとともにランプレーを助けるブロッキングでも貢献しました。さらにガードナーも3タックル、1QBサックを記録するなど他の新人選手も活躍しました。

そして先発QBはダン・マリーノだったんですが、マリーノのパスプレーは試合全体で22回、それに対してランプレーを39回行っています。前年までのマリーノのパスに比重を置いたオフェンスから一変して新しいスタイルのオフェンスを印象付けた試合でもありました。

『3年でスーパーボウル制覇を実現する』これはジョンソンの就任時の公約とも言われた言葉ですが、結局実現できず、ジョンソンも4年間ドルフィンズのHCとして采配を振るいましたが、3回プレーオフに進出したものの、スーパーボウル進出はおろか、AFCチャンピオンにも届きませんでした。

しかしその試合はいまでも鮮明に記憶として残っています。新人選手ももちろんですが、ベテラン選手も非常に活き活きとプレーしていた印象がありました。その中で最も光っていたトーマスでしたが、その後のドルフィンズのディフェンスの中心、そしてチームのハート&ソウルとしての活躍はファンの皆さんもご存知のことと思います。

もしあの試合でジョンソンがトーマスを先発として起用しなかったら、その後のトーマスの栄光もありませんし、もしかしたらすぐにNFLの世界から消えていたかもしれません。近年ドルフィンズのドラフト指名選手(特に2巡目以降)がほとんど活躍できていない現状を見ると、ジョンソンの新人発掘に関する眼力は非常に優れていたと思います。

今年のドラフトでも何人かの選手を指名しますが、ジョンソンHC時代のように多くの新人選手が活躍してくれればチームも向上していけることでしょうね。