4連勝中のドルフィンズの相手が今年のドラフト全体1位指名のQBジャレッド・ゴフで、しかもそのNFLデビュー戦ということで少し不気味なものも感じていたんですが、ラムズの最初の攻撃を見て、少なくともあまり得点を取られることはないと感じました。

しかし、肝心のオフェンスが全く機能しませんでした。ラムズのディフェンスもよかったんでしょうが、ドルフィンズのオフェンスもリズムを掴めませんでした。雨がかなり降っていたようでしたのでその影響もあったかもしれません。

第4Q中盤を過ぎても得点が取れるどころか、そもそも得点チャンスがほとんどなかったので、もしかしたらこのまま完封されるんじゃないかと思いました。しかし最後は鮮やかな逆転劇を演じ、それまでのオフェンスの不調がウソのような結末となりました。この勝利はいろいろな意味を持った素晴らしい勝利だったと思います。

試合展開から見れば第4QにラムズがFGをミスしたことが試合の流れを変えた形になったんですが、結果の点数を見るとFGが決まっていても勝っていたことになります。ただ、やはりあのFGが決まっていたらドルフィンズは敗れていた可能性の方が大きかったのではないかと思います。

別な見方をすると、あのFG失敗の場面でボールの位置はドルフィンズ陣内30ヤード地点で4thダウン残り1ヤードでしたので、10点リードしているラムズとしては4thダウンギャンブルという手もあったと思います。実際それをやられていたら非常に嫌だったのですが、ラムズはFGを選択してくれました。

結果論ですからどちらが正しかったかは何とも言えないところです。ただ、相手がバッファロービルズやニューイングランドペイトリオッツだったら間違いなく4thダウンギャンブルを選択していたような気がします。あそこで1stダウンを更新されていたらほぼドルフィンズの勝利はなかったでしょう。

ところで、それまでのドルフィンズの得点チャンスは第1QにRBジェイ・アジャイが36ヤードのロングランを決めてラムズ陣内22ヤード地点まで攻め込んだところと、第3Qにファンブルリカバーのターンオーバーでラムズ陣内37ヤード地点からオフェンスを開始したところでした。そのいずれかで得点を取っていたらもっとすんなりと勝てていたかもしれませんが、前者は反則で罰退、後者はTDを狙ったパスをインターセプトされ、得点を取ることができませんでした。

そのインターセプトですが、QBライアン・タネヒルにとっては5試合ぶりのインターセプトでした。この連勝中、タネヒルはインターセプトは1度も犯さず、4試合連続インターセプトなしというチーム記録に並んでいました。5試合連続インターセプトなしという新記録を達成してほしかったんですが、それが途切れたことが敗戦に繋がらなくてよかったと思います。

タネヒルはこの試合でパス34回投中24回成功で172ヤードを獲得したんですが、最後の2回のTDドライブでパス13回投中12回を成功させて115ヤードを獲得しています。ということはそれまでではパス21回投中11回成功でわずか57ヤードしか稼いでいませんでした。それだけオフェンスが機能しなかったということですね。

またランオフェンスもラムズのディフェンスに抑えられました。アジャイは36ヤードというロングゲインはあったんですが、それ以外はほとんど抑えられ、15キャリーで41ヤード(平均2.7ヤード)に止まっていました。この連勝はアジャイのランプレーに支えられることが多かっただけに、抑えられたことでかなりの苦戦でした。

ランオフェンスの不調にはラムズのディフェンスがよかったこともありましたが、それ以上にオフェンシブラインの状態にもあったと思います。この試合を迎えるにあたって、LTブランデン・アルバートとCマイク・パウンシーが欠場し、試合前半にはアルバートの代わりを務めていたLTラレミー・タンシルも怪我で退いてしまいました。結果的に先発メンバー3人が抜けたことになり、それがランオフェンスはもちろん、パスオフェンスにも影響を及ぼしたと思います。

オフェンシブラインの状態が不安定だったということはシーズン序盤の負けが混んでいた状態の時と同じだったので、その意味でもこの試合では敗戦を覚悟してしまいました。しかしそれでも逆転勝利を飾ったんですから、本当に価値ある1勝だったと思います。

最初のタネヒルからWRジャービス・ランドリーへのTDパスはきれいなものではなく、ランドリーがパスをレシーブした時にはエンドゾーンまで結構距離が残っていたと思います。しかしそれをドルフィンズの選手が集まって、ランドリーの体を押し込んでエンドゾーンまで運ぶ姿は何か執念のようなものを感じました。最後にはタネヒルまでそれに加わって押し込んでいたのにはチームの一体感を感じました。

そのTDが次の逆転TDドライブを呼び込んだわけですが、最後はWRデバンテ・パーカーがTDパスレシーブを決めました。そのパーカーは2つのTDドライブで5回パスレシーブをして計57ヤードを獲得しています。勝負どころでタネヒルとパーカーのホットラインが見事に機能してくれました。

オフェンシブラインが不安定な中で、タネヒルはプレッシャーのかかる場面で見事に逆転劇を演出しました。昨年までだとこういう試合では必ず敗れていたんですが、チームが連勝中ということもあり、ラムズの得点力不足に救われたこともあるかもしれませんが、タネヒルの成長、さらにはHCアダム・ゲイスの手腕は高く評価されていいのではないかと思います。