ドルフィンズのレギュラーシーズン第14週の対戦相手は、ホームでの対ボルチモアレイブンズ戦です。レイブンズとの対戦といって真っ先に思い出すのは、やはり2007年シーズンの試合でしょう。ただ、その試合だけでなく、シーズン全体がドルフィンズファンにとっては忘れられないものだったと思います。

2007年、ドルフィンズはHCとしてカム・キャメロンを迎えて、新しいスタートを切りました。しかし、開幕からなかなか勝てずに連敗を重ね、13試合を消化したところでまだ勝ち星がありませんでした。そしてシーズン全敗という不名誉な記録も現実味を帯びてきたところで、このレイブンズ戦を迎えました。

戦前の予想では、このレイブンズ戦がシーズン全敗を阻止する最も大きなチャンスだと言われていました。レイブンズもその時点で7連敗中だったからです。それだけにドルフィンズファンとしては、ホームゲームであるし、今度こそ勝ってもらいたいと期待をした試合でした。ちなみにこの試合には1972年のパーフェクトシーズン達成時のメンバーが観戦に訪れていました。

試合は開始直後からレイブンズが得点を重ねて優位に進めました。最初の2回の攻撃で、いずれもKマット・ストーバーがFGを決めて6-0とリードを奪いました。

ドルフィンズもKジェイ・フィーリーのFGで3点を返しましたが、レイブンズはQBカイル・ボラーからWRデリック・メイソンへの17ヤードTDパスで7点を追加、13-3とリードして前半を終了しました。この時点で、またこの試合もダメかなと思うのと同時に、シーズン全敗という悪夢が頭をよぎりました。

しかし後半に入って、RBサムコン・ガドーの7ヤードTDランで7点を返し、さらにインターセプトからつかんだチャンスをフィーリーのFGにつなげて13-13の同点に追いつき、そして試合終了間際、残り試合時間2分を切ったところでフィーリーのFGでついに16-13と勝ち越しました。

さすがにこれで勝ったと思ったんですが、その後に追いつかれてオーバータイムに突入した時にはまた嫌な予感がしました。そしてオーバータイムで攻め込まれてFGまでいった時には、44ヤードという決して難しい距離のFGではなかったし、完全に諦めました。

でも、そのFGをミスしてくれて、その直後の攻撃でQBクレオ・レモンからWRグレッグ・カマリロにパスが決まって、それが決勝TDパスレシーブとなった瞬間のスタジアムは最高潮、私も勝利が決まった瞬間は何かホッとしたような気持ちになりました。

選手やコーチの喜びの表情も印象的だったんですが、当時のドルフィンズのオーナーであったウェイン・ハイゼンガが涙を流して喜んでいる姿はとても感動的でした。

勝利の直接の立役者であったのはほとんど無名のレモンとカマリロだったんですが、改めて振り返って見ると、前半終了間際のFGブロック、そして第3Qから試合終了間際までレイブンズに得点を許さなかったディフェンス陣が大きな貢献をしてくれたと思います。

ところでそのレモンとカマリロですが、レモンは2009年にレイブンズに練習生として所属したのを最後にNFLから離れ、その後2年間CFL(カナディアンフットボールリーグ)のトロントアルゴノーツでプレーした後に引退し、現在は高校でコーチをしているということです。

レモンはNFLでのキャリアのスタートとラストがレイブンズ所属で、その途中でレイブンズと敵対して歴史に名を残したということで、レイブンズとは不思議な巡り合わせの因縁があった選手と言えるでしょう。

またカマリロは2008年から先発WRに定着し、2010年から2年間はミネソタバイキングスでプレーしたんですが、2012年にニューオーリンズセインツに移籍して5試合に出場したのを最後にNFLから離れ、実質的に引退しています。結果的に華々しい活躍はなく、このレイブンズ戦での1プレーだけで歴史に名を残した選手と言っても過言ではないでしょう。

この試合の直後には、レモンとカマリロにはこれをきっかけとして大成してほしいと思ったんですが、結局は大成することができませんでした。ただ、それもまたNFLの世界なんですね。